外観検査とは – 導入効果・導入事例・検出可能な不良例など

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外観検査とは - 導入効果・導入事例・検出可能な不良例など外観検査とは - 導入効果・導入事例・検出可能な不良例など

外観検査(visual inspection)とは、品質保証・品質維持のため製造品の外観を検査すること。製造業の品質管理においてこの外観検査は基本的な検査項目の一つとなっています。

外観検査によって製品が市場に流通する前に不良品を除外することで、製品の品質を一定に保てるようになり、顧客の安全や満足度が高められます。

今回は外観検査をテーマに、外観検査の基本的な情報と各種検査の手法、検査項目などについてご紹介いたします。

外観検査とは

外観検査とは

外観検査(visual inspection)とは、品質保証・品質維持のため製造品の外観を検査すること。具体的には、製造品に付着したキズ・打痕・バリ・欠け・変形・湾曲・色ムラといった不良を人間の目視による確認やコンピュータによる自動判定を行うことで、良品・不良品の判定を行います。

外観検査で検知する不良の一例

  • 製品の表面についたキズ
  • 金属の変形や割れ
  • ガラスの割れや欠け
  • ガラス内部の気泡
  • 食品パッケージの破れや印字ミス
  • 布に付着した汚れ

など

外観検査の主な手法

外観検査の主な手法

外観検査の主な手法には

といったものがあります。それぞれの概要と特徴を詳しくご紹介します。

目視検査

目視検査とは、文字通り人間の目で製造品に異常がないかを判別する検査のこと。「官能検査」の一つとして数えられますが、実際の現場では目視だけでなく、同時に全ての五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)を活かしながら品質をチェックするため、判定精度や柔軟性が高く、業界・製品問わず広く行われています。

目視検査でチェックされるものとしては、製品表面に付着したキズや異物、形状の不良、商品に刻印された印字のミスなど様々です。

一方で、目視検査は基本的に人間の目(その他五感を含む)で良否判定を行うため、ヒューマンエラーが起きやすく、作業員によって検査精度にバラツキが生じやすいといった課題もあります。

このような目視検査における精度のバラツキを解消するため、また検査のスピードを向上させるために、人間の目に代わる画像処理システムといった自動検査の導入が近年飛躍的に進んでいます。

自動検査

自動検査とは、主にコンピュータを使った画像処理システムなどを用いて自動的に検査を行う仕組みのこと。カメラによって撮影された静止画や2D/3Dセンサーなどのデータを用いて製造品の外観や形状を取得し、見本(良品)となるデータと比較を行いながら、キズや汚れなどの不良を判定します。

昨今の技術進歩により、単一的なルールベース(閾値ベース)による外観検査装置だけでなく、AI(人工知能)や機械学習を活用した新たな外観検査装置や専門のソフトウェアも登場しています。これにより単一的な判定だけでなく、同時に複数の要素の同時判定や相関性による複雑な判定を可能にしたり、装置や仕組みを導入した後に発生する検出精度の低下を運用しながら向上させていくことが可能となってきています。

一般的には、生産量が少なかったり、単価の高い製品に対して目視検査が行われることが多く、反対に生産量が多いものや単価の低い製品の場合には自動検査が用いられることが多いです。

このように人間による目視検査かコンピュータや専用装置またはソフトウェアによる自動検査かの大まかな分類ができます。さて次に生産ラインにおける検査手法を見てみましょう。

インライン検査・オフライン検査

「インライン検査」は、製造ラインに外観検査の工程を組み込んだ方式を言います。

インライン検査は生産ラインを止めることなく検査をライン上に組み込めることから、効率良く生産できるメリットがあります。ただし、検査体制や検査装置などに合わせて製造ラインを変更する必要がある(またはその逆も)ため、場合によっては導入自体が困難なケースもあるでしょう。

反対に「オフライン検査」は、製造ラインには組み込まず別に行われる検査のことです。

オフライン検査は、インライン検査では難しい製品や部品の検査をする際に用いられます(もしくは単純にインライン検査の導入コストや導入期間が捻出できないため、従来から続くオフライン検査を継続しているケースも多い)。

インライン検査と比較すると、時間をかけて詳細な検査を実施できる点はメリットですが、反対に検査に時間がかかってしまうため、大量生産品などには向いていないといったデメリットがあります。(人件費や検査に必要な時間に対してコストが合わない)

ここでは外観検査を生産ラインに組み込むか、組み込まないかという観点での分類をご紹介しました。次は実際にどれだけの数の検査を行うかの分類です。

抜き取り検査・全数検査

「抜き取り検査」は、製品ロットの一部をランダムに取り出して検査する方法を言います。ランダムに抜き取りを行い、ロットの品質水準と照らし合わせて良否判定を行います。

抜き取り検査は、生産量の多い製品や製品の特性上全数検査が実施できない場合に用いられます。当然すべて検査するわけではないため、不良品を完全にゼロにすることは困難です。(一定数不良が許容される製品または製造工程に適用されるケースも多い)

反対に「全数検査」は、対象となる製品をすべて検査し、良否判定を行う方法です。

全数検査は、不良品の流出をゼロに近づけることができるので、品質保証・品質維持のためには最適な検査方法と言えるでしょう。しかし、検査時間や検査の体制や莫大なコストがかかるため、生産量の多い製品や安価な製品の検査には不向きです。

外観検査を自動化するメリット

外観検査を自動化するメリット

ここまで外観検査の手法についてご紹介してきました。先述したように近年、AIやIoTといった新しい技術の登場やデバイス(カメラ・パソコン等)の性能の向上、それに加えて検査する労働力の不足などの背景から、外観検査を自動化する取り組みも非常に増えています。

では実際に、外観検査を自動化するメリットにはどのようなものがあるか見てみましょう。

それぞれ詳しく説明していきます。

不良流出リスクの低減(品質保証)

メーカーは製品を作るにあたって顧客に提供する製品の品質保証をしなければなりません。外観検査を行うことで不良品流出のリスクが低減でき、基準をクリアした製品のみを出荷できるため、最終的な消費者や利用者に対して安心・安全な製品を届けることができます。

自動化によるコスト削減

外観検査を自動化するためには、外観検査装置や外観検査ソフトウェア等の導入コストが必要です。しかし実際には、それらを導入することで、検査員の現場負担を軽減したり(省人化含む)、検査員への教育コストの削減が見込めます。

サイクルタイムの短縮

製造業の現場では、1分1秒の効率化を実現することで生産量に直接影響を及ぼします。そのため、サイクルタイムを短縮することは企業の売上・利益に直結する重要な課題です。

外観検査をインライン検査などにより一部または全てを自動化することで、結果としてサイクルタイムの短縮に繋がり、企業の利益拡大にも貢献できます。

外観検査で見つかる不良例

外観検査で見つかる不良例

外観検査で発見される不良は検査対象となる製造品によっても内容は様々です。
ここでは外観検査で検出する不良例として代表的なものを一部ご紹介します。

金属部品

金属部品の外観検査における不良例としては、

ネジ・ボルト…割れ、変形、クラック、バリ、寸法ズレなど
ベアリング…サビ、腐食、線傷、打痕、巣(空気孔)など
溶接…アンダーカット、アンダーフィル、割れなど

などが挙げられます。

樹脂製品

樹脂製品とは主にプラスチックの加工品を意味します。樹脂製品の不良例としては、

ボトルキャップ…キャップの変色、汚れ、パージ剤残りによる黒点、焼けなど
樹脂成型品…キズ、スジ、フローマーク、ジェッティング、銀条など

などが挙げられます。

電子機器製品

電子部品は自動車をはじめ、電化製品やパソコン・スマートフォンなどの精密機器に使用されます。電子機器製品の不良例としては、

半導体パッケージ…モールド不良による変形、パッケージのキズなど
プリント基板…実装の位置ズレ、ショート、断線など
はんだ…ボイド、はんだ不足、ピンホール、はんだボールなど
液晶…変形、反り、割れ、欠けなど
コネクタ…ピンやリード曲がり・欠損、コプラナリティ(平坦度)のばらつき

などが挙げられます。

食品

食品分野の不良例としては、

  • 賞味期限(消費期限)の印字ズレや印字間違い
  • 食品の異物混入(髪の毛など、ただし気泡の発生は良品扱いなど)
  • パッケージのキズ、シュリンクの破損
  • 飲料物の液面高さの違い

などが挙げられます。

各種機能

上記のような製品や商品に付いたキズや汚れ、付着した異物などとは異なり、製品の機能性を担保するための外観検査が行われるケースも存在します。

株式会社デンソーでは、自動車のメーター(コンビネーションメータ)の液晶画面部分の高精度な表示検査にAIを活用した外観検査ソフトウェア「Impulse」を採用しています。

複数台カメラから取得した大容量かつリアルタイムの動画データの分析に同ソフトウェアを活用し、品質の安定化や現場の負担低減に効果を発揮しています。

外観検査における検査項目

外観検査における検査項目

続いて外観検査の検査項目について見ていきましょう。代表的なものとして、

  1. 仕様・形状・構造の検査
  2. 製品表面の検査
  3. 組み立て後の検査
  4. 不良発生の要因分析
  5. 製造工程や設計の改善

の5つの検査項目についてご紹介します。

1. 仕様・形状・構造の検査

仕様・形状・構造の検査は、仕様や形状などが基準値を超えたかどうかを判別します。異常が発見された場合、品質保証ができなくなってしまいます。

検査内容については以下の通りです。

形状…変形、欠損、指定された形状との違いなど
構造…組み立て・組み合わせの位置ずれなど
寸法…指定された寸法との違いなど
意匠・印刷…指定の意匠や印刷との違いなど
…色ムラ、変色、色目・色調の違いなど

2. 製品表面の検査

製品表面の検査では、表面についたキズや汚れ、凹凸などをチェックします。製品によっては品質保証ができないケースもあります。そうではない場合でも、見た目や使用感などを左右する重要な検査工程となります。

検査内容については以下の通りです。

キズ…製品表面についたキズや擦れ
付着物…異物、ほこり、汚れなど
感触・見栄え…シワ、ツヤ、凹凸、ムラ、劣化、感触など

3. 組み立て後の検査

組み立て後の検査では、組み立ての丁寧さや組み立て後の動作確認、バリの有無などをチェックします。検査内容については以下の通りです。

丁寧さ…バリや突起、加工跡など
仕上がりの品質…動作確認、良品との差異など

4. 不良発生の要因分析

外観検査によって不良が発生した場合には、その要因をしっかりと分析して、不良が発生しないよう製造機械や設備の制御パラメータを調節したり、作業工程の問題点を洗い出すなどの対策が必要です。

近年AIや機械学習の進歩により、不良発生の要因分析や組み立て作業における作業のボトルネックが可視化できるようになってきています。

▼東洋製罐様:缶製造ラインにおける缶ボディ成形工程での不良品検出
https://www.brains-tech.co.jp/case/case20-toyo-seikan/

▼「Impulse」作業分析アプリケーション
https://www.brains-tech.co.jp/impulse/work-analysis/

5. 製造工程や設計の改善

4.の調査により発見した不良の発生原因について、まずは対処療法的な処置を行います。その後、根本的な課題についての解決方法を検討したうえで改善策を実行します。

AI外観検査ソリューション「Impulse」

AI外観検査ソリューション「Impulse」

弊社ブレインズテクノロジーが開発・提供する異常検知ソリューション「Impulse」は、機械学習技術の実用化を目的に、2014年市場に先駆けてリリースされ、数多くのお客様の「現場で鍛え上げられた」AI外観検査ソリューションです。

製品・部品に付着した複雑な異常を判定する高精度なAIモデルを有する一方で、データサイエンティストでなくても扱える製品をコンセプトとした扱いやすい製品です。

すでに撮影データをお持ちであれば、無料でのデータ分析相談サービスも実施しておりますので、ご関心ございましたらぜひ一度貴社の課題等含めご相談いただけましたら幸いです。定期的に製品に関するウェビナーも実施しております。

異常検知ソリューション「Impulse」最新セミナー&イベント情報
https://info.brains-tech.co.jp/impulseevent

まとめ

今回は、外観検査をテーマに、外観検査の基本的な情報と各種検査の手法、検査項目などについてご紹介いたしました。

外観検査を行うことで、不良流出リスクの低減が可能となり、結果として製品を利用する消費者や利用者の安心・安全に繋がるため、製造の現場では非常に重要な検査の一つと言えます。特に目視検査の自動化を行うことで、サイクルタイムの短縮が実現し、生産性向上にも直結します。

また近年ではAIや機械学習の発展により、不良が発生した際の要因分析も可能となっています。目視検査に時間もコストもかかっているなどのお悩みがあれば、ぜひ外観検査の自動化や不良発生の要因分析に最新のAI技術を活用してみてはいかがでしょうか。

▼AI異常検知ソリューション「Impulse」
https://www.brains-tech.co.jp/impulse/

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