製造現場で利用される機械・設備へのAI異常検知の具体的事例

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製造現場で利用される機械・設備へのAI異常検知の具体的事例

異常検知とは、あらかじめ定められた状態から外れた「正常でない」状態を検知し、知らせることをいいます。近年、製造現場で使用される様々な機械や設備に対し、AI(機械学習)を活用する動きが広まっています。

今回は具体的な機械や設備を例に挙げて、どのようなAIによる異常検知が行われているかの事例やユースケースをご紹介します。

Impulse
AIを活用した予知保全に最適なソリューション「Impulse」
2014年市場に先駆けてリリースされ、数多くのお客様の現場で鍛え上げられた異常検知ソリューション「Impulse」。

複雑で膨大なセンサーからの時系列データや音声・画像・映像等からデータを収集/分析し、従来の管理では発見できなかった障害や故障予兆の検知、不良品の検出、要因分析などを行います。

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製造業でよく利用する機械・設備

製造業でよく利用する機械・設備

実際の製造現場では様々な機械や設備が使用されていますが、特に代表的なものとしては次のようなものがあります。改めて俯瞰して見てみましょう。

射出成形機

樹脂(プラスチック)の主な加工方法である、成型加工に使用される機械です。金属で作られた型(金型)の中に、熱して溶かした樹脂を圧力をかけながら射出し、冷却させた後、型を開いて製品を取り出します。(射出成形機におけるAI異常検知のユースケース

ダイカストマシン

ダイカストとは、加熱して溶かした金属を型に流し込む鋳造の一種です。溶かした金属を高速、高圧で型に流し込むのが特徴で、アルミやマグネシウムなどの非鉄金属に対し行われます。金型の開閉や溶けた金属の流し込みなど、一連の工程を行う機械をダイカストマシンと呼びます。(ダイカストマシンにおけるAI異常検知のユースケース

押出成形機

押し出し成形とは、材料に圧力をかけて金型から押し出し、金型と同じ形状の断面を持った連続的な製品を得る方法です。アルミなどの比較的柔らかい金属や樹脂などに対して行われ、棒やアングル、パイプ材などを作るのに用いられます。押出成形機は、そのような加工に使用する加工機です。(押出成形機におけるAI異常検知のユースケース

工作機械

工作機械とは、主に金属の材料に対し、切る、削る、磨くといった加工を行う機械のことを指します。ボール盤や旋盤、フライス盤の他、マシニングセンタや複合加工機などがあります。(工作機械におけるAI異常検知のユースケース

精密加工機(微細加工機)

精密加工機は、工作機械の一種で、微細加工機ともよばれています。工作機械の中でもNC工作機械と呼ばれる、数値制御により機械が自動で加工を行う機械に分類され、さらにその中でも精度の高い、微細加工を行う工作機器です。100万分の1ミリ単位の加工を行います。(精密加工機におけるAI異常検知のユースケース

電子制御装置

電子制御装置とは、センサやカメラを通じて送られてきた情報を元に、機器の動作をコントロールする装置全般を意味します。炉内の温度を検知し、加熱器の出力を自動調整するものなどがあります。(電子制御装置におけるAI異常検知のユースケース

産業用ロボット

工場や倉庫などで働くロボット全般を指します。搬送や組み立て、加工など、従来ならば人が行っていた作業を行います。前述の工作機械や精密加工機も産業用ロボットに含まれます。(産業用ロボットにおけるAI異常検知のユースケース

このような様々な機械や装置に対し、AI技術を活用した異常検知への取り組みが近年行われています。次はこれら機械や設備に対する実際のAI活用事例を紹介していきます。

射出成形機におけるAI異常検知

射出成形機におけるAI異常検知

樹脂の成形に用いられる射出成形機では、型を閉じる圧力や樹脂を流し込む際に樹脂にかける圧力の他、樹脂の射出速度、樹脂や型の温度、機械の振動など、様々なデータを取得することが可能です。

このようなデータを用いてAIによって分析、異常を検知することで、機械の停止や故障を未然に防ぐといった事例があります。

例えば、周辺温度の変化により変位センサの出力値が変動してしまう温度ドリフトや、温度や湿度等の影響をAIによって検知し、機器の異常停止に至る前に対策を行うことで、ダウンタイムを短縮できるといったものです。

また、不良品発生の要因特定にもAIによる異常検知の技術が応用されています。不良発生時の各種データから閾値を超えていたものをピックアップしたり、その相関関係を分析することにより、不良発生の原因特定が容易になります。

さらに現場の熟練者によって行われる機械や設備のパラメータ制御(調整)をAIによって数値化(形式知化)し、技能承継や作業の一般化の一助にすることも可能です。

ダイカストマシンにおけるAI異常検知

ダイカストマシンにおけるAI異常検知

アルミダイカストを行うダイカストマシンにおいては、溶けたアルミを金型の中に射出する際、アルミの充填度に応じて流速や圧力を適切に調整することが求められます。

しかしこのとき、流量を調整する弁には制御油などによる高い圧力がかかり、変位してしまうケースがあります。そこで、サイクル毎に弁を定位置まで戻す動作を行い、その際に弁に変位が認められた場合には、異常として検知するなどといった方法があります。

押出成形機におけるAI異常検知

押出成形機におけるAI異常検知

押出成形機においてもAI技術による異常検知が行われています。例えば、スクリューとシリンダー、バレルの圧力や、電動モーター、ベルト、プーリーなどから発生する振動や、そこに流れる電流値などのデータをもとに異常を検知するといった手法です。他にもシリンダーを加熱するための電熱ヒーターの温度なども用いられます。

工作機械におけるAI異常検知

工作機械におけるAI異常検知

工作機械におけるAI異常検知の分野では、ドリルの回転速度や刃物にかかる圧力、ツールの移動速度や回転速度などのデータが活用されます。

工作機械においては、例えば加工中に刃物が折れたり、チッピングという微細な欠けが、刃物に付着するケースがあります。このような場合にそのまま加工を続けると、加工精度が下がったり、工具が破損する可能性が生じます。そのため、異常が発生した場合には速やかにそれを検知する必要があります。

また、センサデータを活用するだけでなく、画像(静止画)による異常検知も可能です。例えば、ドリルで穴開け加工を行う際、空けられた穴の画像から、刃先のダメージの有無などを判別し、異常を検知するといったものです。

精密加工機(微細加工機)におけるAI異常検知

精密加工機(微細加工機)におけるAI異常検知

ナノオーダーの加工を行う精密加工機においては、ツールのわずかな不具合が加工不良に繋がります。そのため精密加工機における微細なチッピングの検出にもAIによる異常検知が活用できます。

例えば、加工時に工具にかかる負荷を取得し、通常時の波形を学習することで、AIによって通常と異なる波形を判別し、異常を検知するといった手法です。

電子制御装置におけるAI異常検知

電子制御装置におけるAI異常検知

制御電子装置は、車や鉄道など、輸送機器を中心に特に多く利用されています。例えば、自動車の前方に設置されたカメラなどから取得される画像(静止画)により、車線のはみ出しを検出するといった応用がこれに該当します。

自動車をはじめ、工場内を自動走行する輸送機などでの活用は急速に広がっているものの、製造用機械や製造設備においては、まだそこまで事例として多くはありません。

また製造分野ではないものの、携帯電話などの通信機器におけるネットワーク監視など、状態監視としてのAI異常検知は盛んに行われています。(参考:発見困難な通信障害(サイレント障害)の監視基盤としてImpulseを採用

作業用ロボットにおけるAI異常検知

作業用ロボットにおけるAI異常検知

製造分野における作業用ロボットとは、協働ロボットなどに代表されるような、人が行う作業を人と共に行うロボットをいいます。自動車製造などを中心に導入が進んでおり、自動車のドア部分の溶接作業や、ボディの塗装工程などで広く利用されています。

このようなロボットは、急な停止や故障が生産ラインの停止に繋がり、歩留まり率を大きく低下させる原因にもなってしまいます。そのため、ロボット自体の状態監視や故障予兆検知にAIを活用するケースもあります。

今回ご紹介したものは、製造現場における代表的な機械や設備へのAI活用の事例ですが、このほかにも様々なものを対象にAI活用が行われています。

AI異常検知ソリューション「Impulse」を開発・提供する弊社ブレインズテクノロジーでは、定期的にこうしたAI活用の事例セミナーをオンラインにて開催しております。情報収集でも結構ですので、ぜひ定期的にご参加いただけますと幸いです。

製造現場におけるAI活用、何から取り組むべきか

製造現場におけるAI活用、何から取り組むべきか

今回ご紹介したように、製造現場においてAIは、多くの課題の解決に繋げられる可能性を秘めた技術です。しかし、実際に推進するとなるとどのような課題から取り組むべきか、判断に迷うこともあるかと思います。

過去に数々のプロジェクトを推進してきた弊社の経験からお伝えすると、AI活用を成功させるためには、まずは解決したいテーマを一つに絞り、スモールスタートで始めることが重要だと感じています。同時に複数のテーマを追うことは、返ってプロジェクトを複雑化させてしまい、中途半端な結果となる可能性があるためです。

また、こうしたAI活用の取り組みに挑戦する際の社内の体制強化や周囲を巻き込む力も必要です。チャレンジに前向きで、時にはサポートをしてくれる良き理解者を早期に見つけておくことも非常に重要になってきます。

もちろんそのためには、プロジェクトに明確な目的が必要です。現場の負担軽減や生産性向上による売上の拡大、あるいはコストダウン。さらには、機械や設備の停止や不良品の流出などによるリスクの排除など、会社や周囲にとって刺さりやすいテーマを見つけておくのも良いでしょう。

まとめ

さて今回は、製造現場でよく使用される機械や設備における、AI異常検知の事例やユースケースについてご紹介いたしました。射出成形機やダイカストマシン、工作機械など、製造業で広く使われている機械についても、AIによる異常検知の分野が広がっています。

こうした製造現場のIoT化やスマート化を積極的に進められるかどうかは、将来的な企業の生き残りを左右する重要な意思決定かもしれません。

弊社ブレインズテクノロジーが開発・提供するAI異常検知ソリューション「Impulse」は、機械学習技術の実用化を目的に、2014年市場に先駆けてリリースされて以降、数多くのお客様の「現場で鍛え上げられた」製品です。

単に製品を導入するだけではなく、プロジェクト推進のサポートやお客様の現場に合わせた開発・カスタマイズ等のご相談も可能です。AIによる異常検知にご関心がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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2014年市場に先駆けてリリースされ、数多くのお客様の現場で鍛え上げられた異常検知ソリューション「Impulse」。

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