製造業における動画データ分析によるAI(機械学習)導入事例

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製造業における動画データ分析によるAI(機械学習)導入事例

製造・生産現場においてトレーサビリティやセキュリティなどの観点から、カメラを設置し、動画を記録する企業も今や少なくありません。しかし、せっかく動画まで撮影しているのであれば、単なる記録以外にも何か応用できないかと考える方も少なくありません。

また昨今AI(機械学習)技術が発展していることは多くの方がすでにご存知かと思いますが、動画データから人間の骨格やその動きを認識する「骨格検知」や、製造品や製造時に扱う工具などを見分ける「物体検知」などの技術も飛躍的に進化を遂げているのはご存知でしょうか。

今後ますます製造現場での活用が広がっていくと予想される、動画データとAIを組み合わせた技術について取り上げてご紹介したいと思います。

動画データのAI分析が近年技術進歩している

動画データのAI分析が近年技術進歩している

モノづくりの現場や施設内の監視カメラなど、記録として動画データを活用するケースは今や珍しくありません。特に最近では、AI(機械学習)技術の発展に伴い、物体の検出や識別、処理といったところまでを全て自動化できるようになりました。

従来人間の行ってきた分析と大きく異なる点として、AIの持つ処理能力のスピードはもちろん、音声や静止画、動画といった大容量のデータをリアルタイムかつ多角的に行えることが挙げられます。

例えば、AI分析を使用しない動画分析の場合、撮影された物体の識別には人間による判断が必要となります。そのため、判断に時間がかかったり判断ミスを起こすといった課題が発生していました。

しかし、AIを活用した動画分析の場合は、物体検出や識別、処理を自動で行います。事前にパターンを学習させることで、ある程度AIがそれらの判断をスピーディかつ自動で行えるようになるだけでなく、より人の判断に近い精度で判断することが可能なたえ、現場の負担軽減やサイクルタイムの短縮といった恩恵を受けられる可能性があるのです。

製造業では工場などの現場にカメラが既に設置されているケースも多い

製造業では工場などの現場にカメラが既に設置されているケースも多い

冒頭でも申し上げたように、製造の現場ではトレーサビリティやセキュリティなどの観点から、工場内などにカメラが設置されていることも珍しくありません。

記録として保存された動画データは一定の期間を経た後、サーバ内のデータ容量を圧迫するなどの理由から削除されるケースが大半ですが、せっかくカメラを設置し動画を撮影しているのであれば、記録としてだけでなく何か活用できないかと考える企業も少しずつ出始めています。

こうした背景や昨今のAI・骨格検知・物体検知などの技術発展によって登場してきているのが「AI作業分析」と呼ばれるソリューションです。

▼Impulse作業分析アプリケーション
https://www.brains-tech.co.jp/impulse/work-analysis/

さて次では、AI作業分析ソリューションが製造の現場でどのように活用できるのかを具体的にご紹介したいと思います。

製造業における動画データ分析によるAI導入事例

製造業における動画データ分析によるAI導入事例

製造業における「AI作業分析ソリューション」(動画データのAI分析)によってどのようなことができるのか、以下4つの活用事例をご紹介します。

機械や設備の故障予兆検知・状態監視

製造の現場では、生産ラインにおける急な機械や設備の停止・トラブルが発生しないよう、機械設備の故障予兆検知や予知保全を行っています。

こうした機械設備の故障予兆検知や予知保全には通常、温度・圧力・流量・振動などのセンサから得られたデータを時系列で監視し、データの相関性なども見ながら異常発生の予兆を捉えるなどの取り組みを行う企業も増えています。もちろん現場の保全担当者による常時監視を実施する企業も少なくありません。

上記の監視技術や体制だけでなく、昨今は機械設備をカメラで常時撮影し、収集した動画を分析することで故障予兆検知や予知保全などの取り組みに役立てている企業も出てきています。

故障の予兆が出る際に見た目での変化が分かりづらい機械設備にはあまり向きませんが、動きや色の変化など、見た目での変化が故障要因に繋がるような機械設備の監視に動画データの活用は向いています。

製造品の外観検査

製品や部品についた傷や汚れなどを出荷前に検査する「外観検査」も、昨今静止画(画像)だけでなく動画データの活用が一部行われ始めている分野の一つです。

動画データを活用することで、静止画では捉えられなかった時系列での映像の変化が捉えられるようになったり、製造工程における不良発生の要因を動画からトレースし、要因を特定するといった使い方もできるでしょう。

しかし実際のところは、静止画(画像)データでの外観検査がまだまだデータ容量も小さく、リアルタイム判定にも向くため、動画データの活用よりも一般的です。

組み立て作業における作業漏れ・手順ミスの検知

組み立て作業など人の手による作業は、複雑かつ柔軟な作業が可能である反面、作業漏れや手順ミスなどによって不良品の発生に繋がるなどのリスクもあります。こうした場面において、AI作業分析ソリューションが有効です。

正常な作業工程をAIに学習させることにより、その後の作業において作業漏れや手順ミスを検知した場合に作業者へアラートを発するなど、ポカヨケの仕組みとしての活用が可能となります。またトレーサビリティとしての記録も同時に行えるため、一つのプラットフォームで作業時の異常検知とその記録が行えるというメリットが生まれます。

作業のパフォーマンス改善

作業者のパフォーマンスを改善したり、最大限に引き上げるといった活用にもAIに作業分析ソリューションは効果的です。

例えば、熟練作業員の作業と若手作業員との比較を行い、どこに無駄が発生しているかや、作業時の体勢や姿勢など、細かな動きに関しても違いを表してくれます。

また作業工程・作業時間を作業者ごとに自動集計が行えるだけでなく、ダッシュボードで可視化できるため、作業工程や作業者ごとのボトルネックが特定できるといったことに役立てられます。

作業員の負荷低減・ケガ等の防止

AIによる作業分析は、作業員の負担低減やケガなどの防止にもつながります。

例えば、作業者の体勢や姿勢を定量的に評価し、長期的に働くことを前提に無理が発生していないかといった人間工学の分野への応用です。またそのほか、ケガや重大な危険などが及びそうな場合に現場でアラートを出すなどの活用も可能です。

このように、AI×動画データを活用したAI作業分析ソリューションは、機械設備の監視や製造品の不良判定だけでなく、技術継承や労働者不足といった製造業全体が抱える課題に対して、かなり広くアプローチすることができる製品だと言えます。

5G時代の到来

5G時代の到来

昨今、より高速で大容量の通信技術として「5G」が注目され、一部地域では試験的にサービスの提供が開始され始めています。政府は2025年までに全国97%のエリアで5G基地局を展開する(各都道府県90%程度以上)といったビジョンを掲げています。

(引用:総務省「令和4年版情報通信白書」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/pdf/01honpen.pdf

5G技術を活用することで、データ転送容量が大幅に上がるだけでなく(2時間の映画が2.5秒でダウンロードできるほど)、データの遅延も1msと低く抑えられることから、自動運転やロボット産業などが大きく発展すると言われています。

もちろん製造業の現場でも、ロボットアームなどによる遠隔操作など様々な分野にこの5G技術が活用されるのではないかと予想されていますが、その中の一つとして動画データを活用したAIやIoTの活用は発展が見込まれています。

まとめ

今回は、製造業における動画データの分析にAI(機械学習)技術を導入した活用事例をいくつかご紹介しました。

技術継承や労働力不足などの課題が今後も見込まれる製造業において、AIやIoTの導入はますます多くの企業で推進されると予想されています。なかでも、動画データの活用・分析は、昨今のコンピュータによる処理能力の向上や今後の発展が見込まれる5G技術の登場により注目が集まっています。

企業活動における生産性の向上や、生産設備の急なトラブル、不良品流出リスクの低減などの目的に、今回ご紹介したような動画データの活用事例をぜひ参考にしてください。

なお、弊社ブレインズテクノロジーでは、生産現場の生産性向上・品質改善にお役立ていただけるAI異常検知ソリューション「Impulse」を開発・提供しております。ぜひこちらも併せてご確認いただけますと幸いです。

▼異常検知ソリューション「Impulse」
https://www.brains-tech.co.jp/impulse/

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