製造業の最新AI導入・活用事例7選!予知保全・保守、品質管理・改善など

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製造業の最新AI導入・活用事例7選!予知保全・保守、品質管理・改善など

近年ものづくりの現場において、AI(人工知能)の技術を活用した工程改善によるタクトタイムの短縮や各種検査の自動化による現場の負担軽減など、新しい技術を取り入れた改善活動が行われるようになってきました。

しかし、こうした最新技術への興味や関心はあっても、現場に活用できる人材がいなかったり、具体的な推進方法が分からないなど、導入までは至っていないという企業も依然として多いのも現実です。

そこで今回は、製造業における最新のAI活用事例・ユースケースを多数ご紹介いたします。ぜひ現場でのAI活用のイメージを膨らませるためのアイデアやヒントとしてご覧ください。

AIビジネスの市場規模と、製造業における導入率

AIビジネスの市場規模と、製造業における導入率

まずは改めて、AIビジネスの市場が今後どのように拡大していくと予想されているか、そして製造業においてはどのような状況なのか見てみましょう。

国際的なリサーチファームである「IDC Japan」の調査によると、2021年の国内AIシステム市場はエンドユーザー支出額ベースにおける市場規模が2,771億9,000万円、前年比成長率は26.3%となりました。今後前年比成長率は年平均25%前後で伸びていくと予測されており、2026年には8,120億9,900万円ほどの市場規模になると見込まれています。

※引用参照「Google Cloud Industries: Artificial Intelligence acceleration among manufacturers」
URL:https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ49145122

また、2021年にGoogle Cloudから発表された「Google Cloud Industries」によると、2020年度における製造業でのAI活用状況調査では、調査対象国となったイタリア、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、日本、韓国の7国のうち、日本の日常業務でのAI活用率は50%となっています。

一見高いように思える数字ですが、各国の全体平均でのAI活用率が64%のため、実は下回っています。(韓国と並んで上記7カ国のうち最下位)

※引用参照「Google Cloud Industries: Artificial Intelligence acceleration among manufacturers」
URL:https://services.google.com/fh/files/blogs/google_cloud_manufacturing_report_2021.pdf

労働力不足の問題や昨今の原材料の高騰など、日本国内の製造業が抱える問題は大きく、早急に解決しなければ企業の存続にも関わる重要な課題として捉え始めている企業も少なくないでしょう。

こうした背景もあり、近年製造業では現場でのIoT化やスマート工場、そしてDX推進といったキーワードが盛んに叫ばれるようになっています。こうしたIT活用の一つの手段として「AI(人工知能)」の導入を行う企業も増えてきました。

では具体的に、製造業におけるAI活用には、どのような事例や活用シーンがあるのでしょうか。

製造業におけるAI活用事例・ユースケース7選

製造業におけるAI活用事例・ユースケース7選

2014年、機械学習技術の実用化を目的に市場に先駆けてリリースして以後、数多くのお客様の「現場で鍛え上げられた」AI異常検知ソリューション「Impulse」を提供する弊社ブレインズテクノロジーが製造業におけるAI活用事例・ユースケースを7つご紹介いたします。

▼異常検知ソリューション「Impulse」とは
https://www.brains-tech.co.jp/impulse/

1.外観検査・良品・不良品の判定

多くの製造現場では、各種工程における品質のチェックとして「目視検査」を行っています。
こうした人による目視検査をAIによって自動化させることで、より高速かつ高度な検査(外観検査)、良品・不良品の判定を可能にします。

▼事例:株式会社デンソー様
https://www.brains-tech.co.jp/case/case22-denso/

株式会社デンソーでは、自動車メータ(コンビネーションメータ)の液晶画面における高精度な表示検査用として「Impulse」を採用。複数台設置されたカメラから取得する大容量でリアルタイムの動画データの分析にAIを活用し、自動化が実現できただけでなく、目視で捉えられないような瞬間的な異常も見逃さない常時監視検査が実行可能になりました。

2.製造品の不良要因分析・制御最適化

製造品の不良要因の分析や、その分析をもとにした制御最適化もAIによって実現可能です。不良発生時のデータ値やその相関性から、不良発生の要因を特定し、以後同様の不良が発生しないよう最適な制御パラメータを設定するといった活用方法です。

▼事例:東洋製罐株式会社様
https://www.brains-tech.co.jp/case/case20-toyo-seikan/

東洋製罐株式会社では、缶製造ラインにおける缶ボディ成型工程での不良品検出を目的として、異常検知ソリューション「Impulse」を採用しました。

3.機械や設備の予知保全・故障予兆検知

製造現場における機械や設備の故障予兆や状態診断、劣化診断など、予知保全の分野にAIを活用するといった事例です。機械や設備に取付けられた各種センサーやPLCといった機器から、振動や音、温度、圧力、流量、調整弁の開度、電流値など(対象となる機械設備や捉えたい異常によって収集するセンサーデータは異なる)のデータを学習させ、それらを時系列データとして正常稼働時の動きと比較し、故障の予兆や故障状態を検知します。

ヤンマー株式会社中央研究所では、内燃機関の予防保全に向けて多種多様なセンサーデータや、機械学習を活用したクラウド基盤構築に着手。その過程でさらなるサービス向上を目指し、異常検知プラットフォームとして導入したのが「Impuluse」でした。機械学習アルゴリズムを導入することで内燃機関の「健康状態のリアルな可視化」を可能にしました。

▼導入事例:ヤンマー株式会社 中央研究所様
https://www.brains-tech.co.jp/case/case04-yanmar/

株式会社オプテージでは、ネットワーク品質維持や向上に向け、監視制御システムチームが様々な取り組みを行っていました。そこからさらなるサービス品質向上のため機械学習を活用した異常検知への取り組みに着手。従来の閾値監視では発見が難しかったサイレント障害の解決に、高い検知制度を備えた監視基盤として「Impulse」を導入。導入後にはトラフィックの急減をタイムリーに検知し、膨大に発生していた誤検知も抑止可能となりました。

▼事例:株式会社オプテージ様
https://www.brains-tech.co.jp/case/case08-kopt/

4.機械や設備の日常点検の自動化

機械や設備の日常点検の自動化にもAI導入は効果的です。例えば、アナログメータの読み取り、水漏れの有無、ベルトコンベアの各種異常、搬送異常など、静止画や動画データ、センサーデータなどを分析することで、故障や事故に繋がる異常の検知にAIが活用できます。

▼事例:ナブテスコ株式会社様
https://www.brains-tech.co.jp/case/case19-nabtesco/

風力発電機の保守を目的として、風力発電機ヨー旋回部の故障回避・状態監視機器「CMFS」を開発したナブテスコ株式会社では、同製品のデータ分析にAI異常検知ソリューション「Impulse」を採用。着想から短期間で製品化することができ、新規事業立ち上げに貢献しました。さらにImpulseのカスタマイズにより、ヨー旋回部の負荷状態をリアルタイムで可視化する機能といった拡充も実現しています。

5.組立作業員の作業ポカヨケ

製造業におけるAI活用は機会や設備だけではありません。人の作業や動きの分析にも役立ちます。組立作業といった人が行う作業では、手順ミスや作業漏れなどが不良品の発生に繋がります。そうした手順ミスや作業漏れが生じた際の検知方法(ポカよけの仕組み)として、AIを活用するケースが登場しています。

「Impulse」作業分析アプリケーション紹介サイト

6.組立作業におけるボトルネックの解析・パフォーマンス改善

作業ミス・手順漏れの検知だけでなく、作業者の作業パフォーマンス改善にもAI活用が有効となります。各要素作業の作業時間を作業員やそのグループごとに自動集計することで、作業工程のどこがボトルネックなのかをAI×カメラによって可視化することが可能です。

▼AI作業分析で人に依存した組み立て作業を次のレベルに(ホワイトペーパー)
https://info.brains-tech.co.jp/doc/work-analysis-wp

7.作業員の負荷低減・ケガの防止(エルゴノミクス)

AI導入による作業分析は、作業員の負荷低減やケガの防止にも効果を発揮します。例えば、人間の骨格検知技術(作業解析技術)を応用し、作業者の姿勢を定量的に評価することで、無理のない労働環境の実現に役立てるといった活用方法です。

8.組立作業員の作業ポカヨケ

製造業の現場において発生する事故の多くは、操作ミスや確認を怠ったまま次の作業を行ったことによるものが多いと言われます。このようなポカミスを削減・回避するために、カメラによる作業員の作業ミス・抜けの検知をAIで行い、作業ポカヨケを適切に実施することができます。

「Impulse」作業分析アプリケーション紹介サイト

このように今や製造業における多くのシーンでAIの活用が広がっています。静止画やセンサーデータの分析による各種検査の自動化や故障予兆・状態診断といった分野への活用は比較的以前から存在していましたが、近年は動画データの活用も盛んに行われるようになり、活用の場面やアイデアが広がっています。

ここでご紹介した以外にも、日々新しい活用シーンや具体的な導入事例もございますので、ご関心ございましたらぜひ弊社AI事例資料のダウンロードをお願いいたします。

▼製造業向けAI事例集のダウンロードはこちら
https://info.brains-tech.co.jp/doc/impulse_usecases

製造業においてAI導入を行うメリット

製造業においてAI導入を行うメリット

次に改めて、製造業の現場でAIを導入するメリットをおさらいします。
実際に社内で推進する際にこうした導入メリットや推進の目的を設定する際の参考としてもぜひご覧ください。

売上貢献

AIを活用した外観検査の自動化や作業員の作業パフォーマンスの改善によりサイクルタイム・タクトタイムの短縮に期待ができます。また故障予兆の分野では、設備稼働率の上昇が見込めたり、生産技術の分野では、制御最適化による生産量増加が見込めます。結果として、売上や利益増大につなげることが期待できます。

品質向上

外観検査の精度向上による不良品の検出や作業ポカヨケ、不良要因の特定をAI導入によって実現することで、品質の向上や均一化につながります。またAIに蓄積されるデータが増えれば増えるほど学習効率が高まり、高精度な予測を実現できるようになります。

技術伝承

AI導入は、労働力不足で深刻化する技術継承の課題解決にも有効的な手段です。例えばベテラン検査員による良品・不良品判定などにおいて、作業の定量化ができたり、現場の機械や設備の制御パラメータの定量的な最適化によって暗黙知の形式知化が可能になります。

労働力不足の解消

少子高齢化による労働者不足は製造業だけの問題ではありませんが、慢性的な人員不足をAI導入によって業務の負担を軽減するなど一部解消に役立てることが可能です。業務の自動化や効率化をAIが担うことで、省人化を実現できるようになるといったケースです。

作業員の負荷低減・ケガの防止

業務の自動化や効率化は、作業員の負担低減を実現するだけでなく、人が巻き込まれるようなケガの防止に役立ちます。たとえば、インフラ設備の老朽化や機械の故障予測や何らかの異常の検知は作業員の安全面向上にも寄与することでしょう。

新規事業への可能性

既存の製品やサービスにAIを導入することで、これまでにない新しい付加価値やサービスを生み出し提供することが可能となります。弊社事例でも、既存サービスと弊社「Impulse」を組み合わせた予知保全のサービスとして、ナブテスコ社の事例があります。

ナブテスコ株式会社:風力発電機におけるヨー旋回部の故障回避・状態監視サービス
https://www.brains-tech.co.jp/case/case19-nabtesco/

製造業におけるよくあるAI導入の失敗例

製造業におけるよくあるAI導入の失敗例

製造業の現場にAIを導入することで、上記のようなさまざまなメリットを企業にもたらします。しかしAI導入を行った全ての企業が、成功モデルを確立できるわけではありません。ここからは、製造業におけるAI導入の失敗例についても最後にご紹介いたします。

データの量・質の不足のため予測モデルの精度が低い

仮にデータ量が十分であってもデータの質が不十分であれば、予測モデルを高精度で出すことができません。AIを活用するにあたり、学習に使用するデータの量と質は非常に重要です。

プロジェクトの途中変更により目的が変わる

AIを上手に使うためには、AIで何を実現したいのか、明確なビジョンやロードマップが必要です。必要となるデータは目的によって異なるため、途中でプロジェクト内容が変更になったといった場合には、速やかに収集するデータを変更する必要があります。

現場の理解度不足や非協力的なメンバーの存在

従来のやり方を大きく変える可能性のあるAIの導入に、反発心を持つ作業者は少なくありません。そのため、AI導入が経営陣による意思決定であったとしても、実際に活用する現場の理解や協力は不可欠となります。

適用範囲を広げすぎてしまう

AIに頼るあまり、適用範囲を広げすぎるのも問題です。適用範囲が広くなればその分手間やコストが大きくなります。AI導入がすべての課題を解決してくれるわけではありませんので、作業者が対応すべき部分とAIが行う部分を明確にし、作業の棲み分けができるような調整が必要です。

費用対効果(ROI)検証が不十分なため社内承認が得られない

AIを導入したからといって、業務効率の改善が確実に実行できるとは限りません。実際の製造現場でAIを導入した場合にどのような課題が解決できるのか、そこでかけたコストは回収できる見込みがあるのかなど、AI導入前に費用対効果(ROI)に対する検証を十分に行っておく必要があります。検証が不十分だと、社内承認を得ることができず、AI導入自体が実現不可となりかねません。

まとめ

今回は、製造業におけるAI活用の事例やユースケースを多数ご紹介いたしました。

製造業の多くの現場では、労働力不足や原材料の高騰などの製造業が抱える課題や背景からAIを導入・活用するシーンが増えてきました。実際に業務の効率化や省人化、コスト削減、新事業の創出などを実現する企業も誕生しています。一方で、AI導入に失敗したり、推進がなかなかできない企業も多く存在します。

今回ご紹介した内容を参考にAI活用のイメージが少しでも膨らみましたら幸いです。また、今回ご紹介した以外にも、日々新しい活用シーンや具体的な導入事例もございますので、ご関心ございましたらぜひ弊社AI事例資料のダウンロードをお願いいたします。

▼製造業向けAI事例集のダウンロードはこちら
https://info.brains-tech.co.jp/doc/impulse_usecases

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