SPOとOneDriveの違いを理解してナレッジの属人化を解消
カテゴリ:技術課題・解決法
更新日:2026年2月26日
企業が扱う情報資産は日々増加しています。この情報資産を守り、情報共有を行うために、ファイルサーバーの利用からクラウドストレージに移行する企業が増えています。総務省「令和6年 通信利用動向調査」[1]によると、クラウドサービスの利用企業は8割を超えています。調査によると、クラウドサービス利用の用途で最も多いのは「ファイル保管・データ共有」であり、71%を占めています。
また、キーマンズネットが実施した「グループウェアの利用状況に関するアンケート」(実施期間:2025年5月14日~30日、回答数:205件)[2]によると、実際に利用しているグループウェアで最も多いのは「Microsoft 365/Office 365」(57.4%)です。
Microsoft 365で「ファイル保管・データ共有」のサービスを提供しているのが、「SharePoint Online(SPO)」と「OneDrive」です。SPOとOneDriveは、どのような違いがあるのか?、あまり意識せずに利用している方もいるのではないでしょうか。
今回は、SPOとOneDriveについて詳しく解説するとともに、利用用途の違いをナレッジマネジメントの観点から紹介します。
目次
SPOとOneDriveの違い
SPOとOneDriveともにクラウド上のストレージサービスという点では同じです。両者の大きな違いは、OneDriveが個人用のストレージであるのに対し、SPOは組織用のストレージでとなる点です。
ここからは、SPOとOneDriveの違いを知るにあたって、それぞれのサービスの特徴について詳しく見ていきます。
個人で利用するならOneDrive for Business
OneDriveは、Microsoft社が提供する個人向けのクラウドストレージサービスです。インターネット上(クラウド上)に用意された自分専用のデータ格納領域に、文書や画像・動画など様々なデータなどを保存できます。
OneDriveは、
- Microsoft365を契約すれば無料で使用可能
- 自動同期機能でPC上のデータバックアップが簡単に取れる
- 共有設定を行うことで、複数人でのファイル共有も可能
といった特徴があります。
特にポイントとなるのが、個人向けのストレージサービスでもある点です。基本的には、個人にしかアクセス権限がありません。共有の設定を行うことで、社内外にファイル共有できるのも特徴の一つです。
法人向けの「OneDrive for Business」であれば、強固なセキュリティに対応した(二要素認証、データ損失防止「DLP」機能など)クラウド上のサーバでファイル保存ができます。1ユーザー1TBまでの容量が利用可能です。お客様や取引先とのファイル共有で、「脱PPAP」をすることも可能です。
組織でファイル共有するならSharePoint Online(SPO)
SPOは、Microsoft社が提供する「組織内のコンテンツ、知識、アプリケーションを共有・管理し、チームワークの強化、情報共有、共同作業の円滑化を実現するクラウドベースのコラボレーションプラットフォーム」です。部署やチームごとにサイトを作り、リストやファイルの共有が可能です。大企業の組織で利用するのに適したサービスです。
SPOの主な機能には、
- ポータルサイト(チームサイト)構築
- 検索機能
- 文書管理機能
- リスト
- Wiki
などが備わっています。
ナレッジマネジメントの実践におけるOneDriveの利用の課題
OneDriveはとても便利なクラウドストレージサービスです。しかしながら、個人利用が前提のサービスであるため、組織の中でファイル保存に利用する場合には注意点があります。
下図は、OneDriveを利用する場合の課題を、「情報の蓄積」「情報の共有」「ナレッジとして活用」の3段階で検討した例です。

情報の蓄積
このレベルは、個人が文書を作成してPCに保存します。個人のPCにOneDriveのフォルダを同期して、PCのフォルダにファイルを保存するのと同じ操作でOneDriveに保存することができます。個人の暗黙知が言語化されて形式知になる表出化のプロセスに当たりますが、形式知が個人にのみ蓄積され、属人化が起きている状態と言えます。
情報の共有
ファイル共有の観点では、OneDriveに保存されているファイルは共有されていない状態です。個人しかアクセスできないからです。共有する場合は、ファイル毎に共有の設定をし、リンクを通知することになります。OneDriveの共有フォルダにショートカットを追加することで、ファイルを簡単に見つけられるようにする方法もあります[3]。しかし、「リンク」を知っている人しかファイルを見つけられません。個人が言語化した形式知が特定の人にのみ共有され、既にある形式知から新たな形式知を生み出す連結化が発生しにくくなります。リンクを知っている人しか情報に辿り着けないので、情報格差が発生している状態と言えます。自分が作ったファイルが、組織やチームの他のメンバーにも価値があるものだと思えませんか?
ナレッジとして活用
知識を共有・活用するプロセスによって知識資産の価値を活かし、そのための環境整理とリーダーシップの発揮をすることがナレッジマネジメントです。実践するためには、知識資産を蓄積・共有するプロセスを改善すると業務がどのように変わるのか?環境整理としてどんなITツールを整備するのか?経営指標にどのような影響を与えるのか?ということを検討し、課題解決策を実行します。
OneDriveをナレッジマネジメントの実践のためのITツールとする場合、誰かが必要とする情報が誰でも検索可能な状態にはなりません。自分だけがアクセスできる場所にファイルを保存しているのは、メンバーが「知識を共有したい」と思える職場になっていない状態かもしれません。情報検索の非効率性があると、メンバーは自身の関心や好奇心に従って社内知識を探索することを行わないかもしれません。内発的動機を持つ自立型社員が知識を活用できない環境は、人財の活用にもつながらないと考えられます。
個人のファイルも会社の知識資産:OneDriveの落とし穴
OneDriveの利用の課題がある場合、次のような問題が起きることがあります。
退職時の問題
社員が退職する際、Microsoft 365のアカウントが削除されると、そのアカウントに紐づいたOneDrive内のファイルが消失します。OneDriveは個人用の格納領域であるため、アカウント削除する前に、必要なデータを別のストレージにコピーしておく必要があります。
そのため、管理者は従業員が退職する前にOneDriveへのアクセス権限をもらい、データのバックアップを取っておくことをおすすめします。管理者が退職者のOneDriveのファイルを保存する場合、共有領域にコピーすることになります。個人のファイルも、個人が会社の業務で培った経験や知識が詰まったものです。これは、個人のものではなく、会社の知識資産と考えられます。共有できるファイルは普段からチームや組織内で共有されるSharePoint Onlineのドキュメントライブラリに保存する習慣や組織風土を醸成するのが望ましいと考えます。
アカウント削除後30日間はアクセス可能
組織に属するユーザーのアカウントを削除する場合、Microsoft 365 管理センターの「アクティブ ユーザー」ページよりユーザー削除を行うと「ユーザーの製品ライセンス」「電子メール」「OneDriveで実行する操作」を選択することができます。
別ユーザーにOneDriveへのアクセス権を付与すると、そのユーザーは既定で30日間保持するファイルへアクセスができ、ファイルをダウンロードできます。万が一退職等によりアカウントを削除してしまっても、30日以内であれば対応が可能です。
ナレッジマネジメントの実践で必要な「情報が検索できる状態」とは?
OneDriveの利用の課題を解決する方法は、情報の共有にMicrosoft 365のサービスの一つであるSPOを利用することです。環境整備としては、部署やチーム毎にファイル共有するためのサイトやドキュメントライブラリを用意します。そして、日常の業務フローの中に、情報共有すべきファイルはSPOに保存するプロセスを組み込みます。共有フォルダにファイルを保存することに抵抗感を持つ組織風土も見られます。その場合、組織にとって知識資産の活用がなぜ必要なのか?経営にどのような影響を与えるのか?ということを検討し、組織のメンバーから共感を得ることが必要と考えます。
SPOを利用した情報共有で課題になるのが、検索して探しているファイルが見つからない、というものです。この場合、企業内検索システムを利用する方法があります。ファイルサーバや社内DB、社内ポータルサイトに加え、SPOやBoxといったクラウドストレージを横断全文検索できるのがエンタープライズサーチです。詳しい内容は、下記をご覧ください。
まとめ
今回は、SPOとOneDriveの違いをテーマにしました。SPOは組織内の情報共有基盤、OneDriveは個人専用のストレージ領域という違いがあります。また、OneDriveではなくGoogle Driveを利用している企業においては、マイドライブのみを使っていると同じ状況になります。
ナレッジマネジメントの実践においては、ITツールの導入だけでなく、組織風土の改革が不可欠であると指摘されています。人的資本経営が注目を集めていますが、それすらも人事システムの導入によるスキルの可視化、エンゲージメントの向上といった短期的に結果が見えやすい内容に目が向きがちです。現場の人材から50歳以上の管理職を含めた人財を活かすための「場」の作り方、チームや組織の情報活用の非効率性の解消、知識創造のためのマネジメントスタイルの導入等、イノベーションが起きる組織に変革するための投資をするにはどうしたら良いでしょうか?
例えば、検索ツールを「便利なもの」と認識すると、それは投資にはならないでしょう。「自立型社員」の育成と社内情報格差の解消を進め、「社員が知識を共有したいと思える職場」にするための投資と考えると、どうでしょうか?人的資本投資の一つと考え、知識の活用が評価され、画期的なアイデアが生み出される場を作るのが目的だと考えるのはいかがでしょうか。
今後も、お客様のDXの取り組みにおけるAI活用、ナレッジマネジメントの実践によるイノベーションが起きる組織への変革に貢献できるコンテンツの提供を目指します。
参考文献
[1] 総務省. 通信利用動向調査. 報道発表資料. 令和6年調査(令和07.05.30公表)
[2] AIや派手な機能よりもグループウェアに望む2つのこと【ユーザー調査】. キーマンズネット
[3] Microsoft公式:共有フォルダーにショートカットを追加する
[4] SharePointのファイル検索機能とヒットしない場合の対処法
著者
柳澤政夫
NeuronES事業開発室 室長
Neuronのマーケティング、インサイドセールス、パートナーデベロップメント、新規事業を担当し、伴走支援者としてお客様対応も行う。化学企業、日本マイクロソフト、アマゾンウェブサービスジャパンなどに勤務。オンラインセミナー「はじめての生成AI」「生成AIで革新するナレッジマネジメント」を主宰。MBA(Finance)、中小企業診断士、日本ナレッジ・マネジメント学会会員



