SECIモデルとは?企業におけるナレッジマネジメントへの活用と具体例

カテゴリ:ナレッジマネジメント

SECIモデルとは?企業におけるナレッジマネジメントへの活用と具体例

SECIモデルとは、個人が持つ知識や経験(暗黙知)を組織全体で共有(形式知化)し、新たな発見を創出するためのフレームワークのこと。

特に企業活動においては、ベテラン社員の勘やノウハウを全社的に共有することで、社員全体のスキルアップが期待できることから、SECIモデルが提唱された1990年代後半からの長い間、注目を集めてきた言葉です。

そこで今回は、

  • SECIモデルの概念
  • SECIモデルの4つのプロセス
  • 各プロセスに欠かせない場と具体例
  • SECIモデルの課題点

などを分かりやすく図解も交えながらご紹介していきます。

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SECIモデルとは

SECI(セキ)モデルとは、個人が持つ知識や経験などの暗黙知を、形式知に変換した上で組織全体で共有・管理し、それらを組み合わせることでまた新たな知識を生み出すフレームワークのこと。

一橋大学大学院教授の野中郁次郎氏らが提唱し、広義のナレッジマネジメントにおける基礎理論として用いられています。

野中教授らは1980年代、国内の製造業における製品開発のプロセスを研究し、どのようにして知識の共有や活用を行い、組織的な知識資源を形成しているのかをこのフレームワークによって明らかにしました。(著書「知識創造企業」:1996年発売)

SECIモデルは4つのプロセスで構成されており、これらが上手く機能すれば、企業活動においてベテラン社員の持つ属人的な暗黙知を他の従業員でも理解できる形として共有でき、従業員全体のスキルアップに繋がると言われています。

なおSECIモデルを語るにあたり、「暗黙知」と「形式知」については理解しておきたいキーワードです。下記でも詳しく解説おりますので併せてご確認ください。

暗黙知と形式知の意味や違いを図解で解説!

【図解】SECIモデル 4つのプロセス

SECIモデル4つのプロセス

SECIモデルには以下4つのプロセスが存在します。

共同化プロセス
表出化プロセス
結合化プロセス
内面化プロセス

これらのプロセスはスパイラル構造となっており、絶えず繰り返す(暗黙知→形式知→暗黙知→形式知…)ことによって、よりレベルの高い知識を生み出します。

共同化プロセス

共同化プロセスは、言葉ではなく何かしらの体験や経験によって、暗黙知を他人に移転させます。ベテラン社員や職人の仕事を見て覚える、一緒にやってみるなどの例が分かりやすいでしょう。

ここではまず暗黙知を暗黙知として伝えられれば問題ありません。相互理解を深めることが重要で、身体や五感を使いながら勘や感覚などを表現して他者に共有します。

表出化プロセス

次に表出化プロセスは、暗黙知から形式知へと変化させる段階です。

個人の持つ勘やノウハウなどの暗黙知を、言葉や図解などに表して他人と共有します。仕事においては、上司や同僚への報告や業務のマニュアル化などがそれにあたります。

結合化プロセス

結合化プロセスでは、先ほどのプロセスで表出された知識を他の知識と組み合わせることで、新たな知を創出します。

具体例としては、自分の仕事に他人の知識やノウハウを取り入れることで、新たな方法で業務の効率化を図ったり、新たなアイデアを発見するなどが挙げられます。

なおこのプロセスで生まれた新たな知は、組み合わされたとしても形式知のままの状態となります。

内面化プロセス

内面化プロセスは、結合化プロセスによって新たに創出された形式知を、各個人で習得するために反復練習等を行うことでまた自分のものとし、形式知から個人の暗黙知へとまた変化する段階です。

例としては、新しく導入したソフトウェアなどの操作を繰り返し行うことで、いちいちマニュアルを見なくても素早く操作でき、さらにその個人なりの工夫(暗黙知)が生まれます。

こうした共同化〜内面化の4つのプロセスを絶えず繰り返すことで、個人の知識や技術がスキルアップし、結果として組織全体の知識や技術が知識資産となって蓄積されていくのです。

なお企業・組織内におけるこうした知識伝承的な活動のことを、一般的に「ナレッジマネジメント」と呼びます。

ナレッジマネジメントとは:社員一人ひとりが持つ知識や経験などのノウハウを、文章や図解などによって説明できる形にし、従業員同士で共有する活動のこと。

SECIモデルが提唱する4つの場と具体例

SECIモデルが提唱する4つの場と具体例

また先ほど紹介した4つのプロセスを活発に行うためには、各プロセスに適した「場」が必要だと、SECIモデルでは提唱しています。

創発場
対話場
システム場
実践場

創発場

創発場は共同化プロセスにおいて、他者と知識の交換を行う場を指します。

実際に業務を経験してみないと伝えられないものもあれば、ランチや休憩室などでの気軽な会話から知識を交換する方法もあります。

ここではできる限り気軽でフラットなコミュニケーションを行うことで、効果的な共同化プロセスが実現できると言われています。

創発場の具体例

  • ランチ会/飲み会
  • 廊下でのすれ違いや休憩室での会話
  • 気軽なチャットルーム
  • 会社のトップが社内を歩き回る
  • 座席のフリーアドレス制の導入

など

直近の話題でも、二人の社員が同時に社員証をかざすことで、二名分の飲料が無料で出てくる自動販売機が登場したニュースもありましたが、こうした取り組みもナレッジマネジメントにおける創発場の提供となりうるでしょう。
出展:PR TIMES

対話場

対話場は、暗黙知を形式知に変換する表出化プロセスにおいて重要な場です。

マニュアルや資料作成などの業務や会議におけるディスカッションを通じて、形式知化していきます。創出場との違いは、会話の気軽さや突発性はなく通常の業務での対話の中で行われること。

ここでは単なる雑談で終わることがないよう、しっかりと暗黙知を形式知に変換できるような場にすべきですし、そうした場を意識的にスケジューリングするなどして設けるのが重要です。

対話場の具体例

  • 会議全般
  • マニュアル作成/資料作成
  • 全社的なミーティング
  • 部署横断のミーティング
  • 合宿ミーティング

など

システム場

システム場は、形式知と形式知が組み合わさる結合化プロセスにおいて重要な場です。

ここでは各社員が形式知を持ち寄れる形式の方が望ましいため、直接の対話ではなくむしろオンラインMTGを行ったり、ナレッジマネジメントツールを利用しながら会議を行う方が効率的です。(その場でのテキスト化や、URLの共有、テキストのコピー&ペーストなどを多用するため)

近年普及したチャットツールなどもシステム場に該当します。

システム場の具体例

  • オンラインMTG
  • Googleスプレッドシートによる共有
  • 各種チャットツール
  • 各種ナレッジマネジメントツール

など(リアルタイムでの更新性が高いツールが適している)

実践場

最後の実践場は、再び暗黙知へと変換される内面化プロセスを行う場です。

新たに創出された形式知を再び個人に戻すプロセスであり、その個人の反復練習によって再び暗黙知へ変換されていく段階です。(新しい業務のやり方を各個人が習得する段階)

この知識の習得の場は、当然各個人が業務する場であるため特に決まった場があるわけではありません。各個人のデスクや作業場、あるいは昨今であれば自宅(テレワーク)のケースもあるでしょう。

実践場の具体例

  • 個人が業務を行う場所(デスク、作業場など)

社内でナレッジマネジメントを推奨するナレッジリーダーは、これら4つのプロセスに応じた場を従業員に適切に提供することが重要だとSECIモデルでは提唱しています。

なおこうした「場」の提供については、他にも各社様々な取り組みを行なっているようです。

▼SECIモデルにおける「場」のアイデア例
・座席のフリーアドレス制の導入
・外部ナレッジマネジメントツールの導入
・Eラーニング教材の作成
・社内FAQシステムの構築
・チャットツールの導入
・社内SNSの導入
・気軽なミーティングスペースの導入
・社員食堂、社内カフェ
・社内ポータルサイトの開設
・エンタープライズサーチ(社内検索システム)の導入

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企業においてSECIモデルをどのように実践するか

企業においてSECIモデルをどのように実践するか

では具体的に、企業におけるナレッジマネジメントの活動としてはどのようにSECIモデルを実践していくと良いのでしょうか。

先ほど紹介した「場」の提供を行うだけでも従業員同士の交流が生まれ、各プロセスが回り出すことで結果的に各社員のスキルアップに繋がることもあるでしょうが、しかしSECIモデルはあくまでスパイラルモデルを提唱しているため、それだけでは不十分だと捉えています。

またこうした活動を基に企業にとって本当に大きな知識財産としていくのであれば、経営層の理解や全社的な理解はもちろん、ナレッジマネジメントを推進するチームや人物をナレッジリーダーとして立てる必要もあるでしょう。

活動前と活動後でどう変化したのか、費用対効果はあったのか等も社内でしっかりと検証していく必要があるからです。

スモールスタートで着実に成功体験を積み重ねることが重要

反対にいきなり大掛かりなプロジェクトとして立ち上げて失敗したり(過度な期待値)、ナレッジリーダーに任せっぱなしで全社的な理解に向けた経営層のサポートが得られず中途半端に終わるなどもナレッジマネジメントにおいては良くある光景です。

こうした活動を社内で初めて行う場合は特にスモールスタートを意識し、特定部署や特定支社などでの実験的な取り組みを行い、社内での成功実績を着実に掴んでいくような進め方をおすすめします。

また昨今では多機能なナレッジマネジメントツールが登場していますが、機能が多すぎるが故に社員にあまり浸透しなかったり、操作方法に関する社内の問い合わせなど多発することでナレッジリーダーやナレッジ推奨部門に大きな負担がかかるなどのリスクも存在します。

できるだけ活動の最初は、社内の目的に沿ったナレッジマネジメントツールを利用し、直感的で分かりやすいツールを選ぶと良いでしょう。

(参考記事)企業のナレッジマネジメントが思うように進まない理由と具体的解決法

企業におけるSECIモデルの課題点

企業におけるSECIモデルの課題点

ご紹介したナレッジマネジメントにおけるフレームワークの「SECIモデル」ですが、実際に取り組むにあたってはいくつか課題となる点も存在します。

ベテラン社員が表出化に貢献するメリットが少ない
高度な知識やノウハウの内面化にもハードルがある
活動自体のゴールに明確な定義がない

ベテラン社員が表出化に貢献するメリットが少ない

ベテラン社員は社内でも特に高度な暗黙知を持ち合わせていますが、彼らにとってそれらの知識を表出化(言語化や図解化など)することに特にメリットがないケースが多いのではないでしょうか。

ただでさえそうしたベテラン社員は普段から忙しく、しかも長年の自分の経験や工夫によって獲得した知識をいくら同僚のためとは言え、タダで共有したくないのが本音ではないでしょうか。

こうした課題を解決するためには、知識を共有することでのそのベテラン社員の業務負荷が将来的に軽減できるような取り組みであることを伝えたり、表出化する時間や場を定例的に作ってしまう、あるいは表出化することでのインセンティブを設けるなど、抜本的な解決方法も重要だと言えます。

高度な知識やノウハウの内面化にもハードルがある

高度な知識やノウハウを持つベテラン社員は表出化の側面で上記のような課題を抱えますが、反対にそれ以外の社員は内面化において個人差があるものの、それなりにエネルギーを必要とします。

ベテラン社員の勘や経験が形式知となっていたとしても、自分のものにできるまで練習を繰り返さなければいつまでも自分のものになりません。

スパイラル上に積み上がっていくものとするSECIモデルの考え方において内面化は、個人の適正や能力次第では途中で止まってしまいがちなプロセスなのです。

一方で意識を少し変えてみると、SECIモデルではスパイラル構造の考え方が提唱されていますが、そもそもベテラン社員が持つ暗黙知をひとまず形式知化するだけでも多くの企業にとっては非常に価値のあることです。このように割り切った考え方をしてみるのも選択肢の一つでしょう。

活動自体のゴールに明確な定義がない

SECIモデルのプロセスがスパイラル構造であることから分かるように、このモデルの問題点をマクロ的に捉えた場合、どこまで知識を昇華させられればゴールなのかの定義を決めることは非常に難しい問題だと言えます。

さらにナレッジマネジメントの活動全体で考えると、あらゆるジャンル・専門分野の知識が存在するとなれば、各知識においてどの段階でどう評価するべきか困難を極めます。

もちろんナレッジマネジメントの活動を否定する訳ではありません。SECIモデルのフレームワークを参考にしながらも最初から完璧を求めすぎず、あるいは実際に遂行した場合において、活動を成功に導いたナレッジリーダー(個人やチーム)らがしっかりと評価してもらえるよう、活動前後の比較や活動後の中間地点でのマイルストーンを定義できるようにしておくことが重要と言えるでしょう。

まとめ

さて今回は、ナレッジマネジメントの活動におけるフレームワーク「SECI(セキ)モデル」についてご紹介しました。

SECIモデルは、自社における技術伝承・知識伝承(ナレッジマネジメント)を進める際の参考となる考え方の一つではないでしょうか。

しかしながら実際に業務レベルに落とし込むと、ご紹介したような課題が出てくるのも事実です。まずは完璧さを求めすぎず、現状の暗黙知を形式知へと変換することをマイルストーンとして実践してみるのも良いでしょう。それだけでも企業にとっては大きな成果だと言えるはずです。

またシステム場としてナレッジマネジメントツールを導入する際は、自社の目的に沿った、スモールスタートが切りやすいものを選択することが重要です。まずは社内で着実に成果を上げていくことを意識してみましょう。

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