ナレッジマネジメントよくある失敗事例と具体的成功事例5選

カテゴリ:ナレッジマネジメント

ナレッジマネジメントよくある失敗事例と具体的成功事例5選

ナレッジマネジメントを推進するにあたって、他社での取り組み事例は大きなヒントになります。

本記事では、

  • 企業におけるナレッジマネジメントのよくある失敗例
  • 企業におけるナレッジマネジメントの成功事例
  • ナレッジマネジメント成功に必要なポイント

などをご紹介いたします。

本記事をお読みいただければ、ナレッジマネジメントはどこで失敗しやすいのか、成功のために必要なポイント何かを把握できるでしょう。

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企業におけるナレッジマネジメントよくある4つの失敗事例

よくある失敗例

まず最初にナレッジマネジメントを導入しようとしたが、上手くいかなかった失敗事例をご紹介します。ぜひ「他山の石」としてご覧ください。

1. いきなり大掛かりなナレッジマネジメントツールを導入して失敗
2. 運用のルールをきちんと設けずに失敗
3. 従業員の理解が得られずに失敗
4. ナレッジリーダーが評価されず異動または退職して失敗

1. いきなり大掛かりなナレッジマネジメントツールを導入して失敗

A社では、ナレッジマネジメントの必要性を感じたDX推進部門のもと、それなりの予算をかけて大掛かりなナレッジマネジメントツールを導入しました。

経営層からも「社員がそれぞれの情報やノウハウを出し合い、活用し合えば、わが社の大きな力になる」と期待されましたが、社員からは不満の声が止まりません。

「ツールの使い方が分かりにくい」「入力が面倒」「今までのやり方でうまくいっている」「業務の負担が増える」etc…そのうち、ツールなど最初からなかったもののように無視する社員も出てきました。

A社はあまりの不評に、いったんツールの使用を見合わせるしかありませんでした。

POINT

大掛かりなナレッジマネジメントツールが決して悪いわけではありません。しかし、何の準備もなしに、いきなり大変革をするのは無謀な選択だったのではないでしょうか。

最初は小さく始め、成功体験を詰んでから徐々に展開していくのが賢いやり方です。

2. 運用のルールをきちんと設けずに失敗

「ナレッジの蓄積が肝心だ」とナレッジマネジメントツールを導入し、複数の子会社の社員も含めナレッジマネジメントに取り組んできたB社。

ナレッジが蓄積されていき、しばらくは順調に進んでいるかのように見えました。しかし実際には、そうではなかったことが後に発覚。

現場からは「規定のフローに従って入力しているだけ」「形式がバラバラで、探したいデータが見つからない」といった声が聞こえてきました。気が付いた時には、膨大なデータベースが様々な形式で乱立し、誰にも参照できない状態に陥ってしまったのです。

B社の社員は、未整理で使いにくい情報の山をせっせと積み上げているだけだったのです。

POINT

入力・整理のルールが未整備だったり、導入したツールの検索機能が乏しい場合、B社のようにデータの蓄積だけで活用できない、形だけのナレッジマネジメントになってしまいかねません。

実行可能な運用のルールをまず作り、周知徹底させる。もしくは、形式や記述の異なるデータや情報の検索に強いツールを選択することで防げた失敗です。

3. 従業員の理解が得られずに失敗

社内にナレッジマネジメントの小さな成功事例を作ったものの、全社的に広めていこうとした時点でつまずいてしまったC社の例です。

当初のプロジェクトチームのメンバーがナレッジマネジメントの伝道師となり「全社に広めてくれる!」と経営層は期待したのですが、うまく運びませんでした。

社内には「情報を共有するメリットがない」「通常業務に追われて入力している暇がない」「せっかくのノウハウを社内のライバルに知られたくない」など、多くの反対派がおり、その圧力にプロジェクトメンバーが屈してしまったのです。

結局、反対派の理解を得ることはできず、C社のプロジェクトは中止となりました。

POINT

ナレッジを共有することの価値を社員にうまく伝えられないと、C社のように失敗してしまいます。単に「これは会社にとってはプラスだから」といった説明だけでは動かない人も少なくありません。

現状の企業文化によっては実際にツールを使い始める前に、ナレッジマネジメントへの理解と前向きな気運を高めておくことが必要です。

4. ナレッジリーダーが評価されず異動または退職して失敗

社員が便利にナレッジマネジメントツールを使いこなし、活発に情報交換がされているような会社でも、中途で失敗してしまった例があります。

D社のナレッジマネジメント推進担当者A氏は、積極的にその魅力とメリットを啓蒙していました。他の社員からも信頼の厚いA氏が積極的に社内を盛り上げることで、ナレッジの共有は進み、D社のナレッジマネジメントは順調でした。

しかし上層部の1人がナレッジマネジメントの取り組みを評価し、別部署への異動を行ったことで風向きは変わりました。

A氏は担当から外れ、後任の担当者は社内からの信頼も集められず、また積極的にナレッジマネジメント推進に打ち込むこともありませんでした。

A社の取り組みは、A氏の異動とともに自然消滅してしまいました。

POINT

ナレッジマネジメントを推進するリーダーの重要性を上層部が理解していなかったため失敗してしまった事例です。

ナレッジマネジメントは直接売り上げに貢献するものではないため、効果が見えにくい側面があります。

活動前後を比較したり、推進の中間地点(KPI)を設けて観測するなど、取り組みの成果や継続の重要性が理解されるよう、客観的な評価指標を設けることが大切です。

【事例から考察】なぜナレッジマネジメントは失敗しやすいのか?

ナレッジマネジメントにおける4つの代表的な失敗例をご紹介しました。ではなぜこのように企業におけるナレッジマネジメントは失敗しやすいのでしょうか。

ナレッジマネジメントへの理解不足

やはり一般的な企業では、まだまだ知識やノウハウを社員同士で共有する文化や重要性そのものがしっかりと根付いていないのではないでしょうか。

「仕事は先輩から目で見て盗むもの」という言葉があるように、社員教育に対する考え方がアップデートできていない、あるいは知識を共有することで「今の自分の地位や立場が守れなくなる」などの考え方も少なくありません。

文化や伝統、価値観はさまざまですが、特に社員がノウハウや技術を自分の財産と考えてしまう風土では、ナレッジを共有するというアイデアそのものが実は反感を買ってしまう恐れがあるのです。

評価が難しくコスト計算ができない

先に述べたように、ナレッジマネジメントは売上に直接的に貢献することがなく、プロジェクトの達成度や貢献度を評価するのが難しいという特徴があります。そのため人的リソースも含めて、コストをどこまでかけていいのかわかりにくい、という側面も。

これらの解決のためには、定量的な費用対効果を測ることも重要ですが、ナレッジ共有によって生まれた新たな気付きや組織を横断するプロジェクトの発生など、社員へのアンケート調査など定性的な側面にも重きを置いて取り組むことが重要です。

またプロジェクトに携わるナレッジリーダー(推進者)の役割も大きく、いかに社内で協力が仰げるか、継続的に啓蒙していけるかといった観点で任せられると良いでしょう。

続いては各企業で取り組んでいる、ナレッジマネジメントの具体的事例を見ていきましょう。

企業におけるナレッジマネジメントの具体的事例5選

では実際に各企業がどのようにナレッジマネジメントに取り組んでいるのか、いくつか具体的な事例を5つご紹介します。

※なお、今回ご紹介する下記取り組みは必ずしも、ナレッジマネジメントの一環として行っているものかどうかの確認は取っておりません。SECIモデルにおける提供すべき「場」と照らし合わせた上で、該当しうる取り組みを各企業のご紹介ページまたはプレスリリース等から引用してご紹介しております。

事例1. 株式会社再春館製薬所「エンタープライズサーチの導入」
事例2. サントリー食品インターナショナル株式会社「社長のおごり自販機」
事例3. 株式会社ソシオテック研究所「DO-LEARNING」
事例4. 株式会社スノーピークビジネスソリューションズ「CAMPING OFFICE」
事例5. カルビー株式会社「フリーアドレス制」「オンライン会議用のブース」

事例1. 株式会社再春館製薬所「エンタープライズサーチの導入」

商品の注文やお問い合わせなど、コールセンター業務におけるナレッジマネジメントツールの活用事例です。

これまでは、膨大な資料の中からページをめくって商品情報や研修資料を探しださなければならなかったが、エンタープライズサーチのおかげで必要な情報が素早く引き出せるようになり、お客様をお待たせすることなく回答できるようになりました。

また昨今の社会情勢等から在宅勤務が始まると利用者数・検索件数が急増。環境整備の負担はほとんどなく、社内の情報共有、展開がスムースにできたそうです。

> 再春館製薬所様のエンタープライズサーチ導入事例詳細はこちら

事例2. サントリー食品インターナショナル株式会社「社長のおごり自販機」

二つ目は「社長のおごり自販機」です。この自動販売機は、社員2人が同時に社員証でタッチすると、2人分のドリンクが無料で出てくるという機能が付いています。

通常こうした会社内の休憩室では、顔馴染み以外はあまり会話がおきないものですが、この自動販売機のように2人揃えば無料でドリンクが手に入るというメリットがあることで、お互いあまり知らない社員同士でも自然と会話できるようになるでしょう。

SECIモデルにおける「創発場」を作る取り組みとして非常に有効ではないでしょうか。

出展:https://www.suntory.co.jp/softdrink/ogori/

事例3. 株式会社ソシオテック研究所「DO-LEARNING」

組織行動学者デイビット・コルブが提唱した「経験学習モデル」をベースに作られた新しい発想のeラーニングです。

このeラーニング教材が面白い点は、実話に基づいた場面で「自分ならどう行動するか」を疑似体験し、振り返り、概念化していくことで行動の質を上げていくことを目指します。

単なるインプットではなく、擬似体験を通して身体に染みこませるこの取り組みはSECIモデルにおける「実践場」として機能するでしょう。

出展:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000086047.html

事例4. 株式会社スノーピークビジネスソリューションズ「CAMPING OFFICE」

「CAMPING OFFICE」はキャンプ場で合宿や研修、ミーティングができる施設です。

以前から、社内親睦会や福利厚生、レクリエーションの一環として、社内でアウトドアを楽しむことはありました。しかし、互いの人柄を知ったり親睦を深めるだけに留まっていたのがほとんどでしょう(もちろん目的が社員同士の親睦であれば問題ありません)。

そうした位置付けから離れて、ナレッジマネジメントの取り組みの一つとして捉えると、SECIモデルにおける「創発場」や「対話場」として、これまでにない体験から新しい活用ができるかもしれません

出展:https://snowpeak-bs.co.jp/camping_office

事例5. カルビー株式会社「フリーアドレス制」「オンライン会議用のブース」

すでに多くの会社で近年普及している座席を固定しないフリーアドレス制。座席の移動によって、チームや部署を超えたコミュニケーションが活発となり「創発場」の役割が期待できます。

また反対に集中して会話できる1人ブースは、オンライン会議などでも集中できる対話場としてSECIモデルの循環をうながします。

一つのオフィスでもレイアウトや使用スタイルによって、複数の「場」を機能させる好例だと言えるでしょう。

出展:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000758.000030525.html

【事例から考察】ナレッジマネジメントの最近のトレンドは?

ナレッジマネジメントにおける最近のトレンドとして、まず無視できないのが、生活様式の変化や多様な働き方への対応です。従来からの紙媒体での資料はもちろん、社内のPCからしかアクセスできないようなツールではこうした働き方にマッチしません。

またもう一つ重要なのは、社員がナレッジ共有に参加したくなるような仕掛けも重要視されているように思います。

先ほどご紹介した「社長のおごり自販機」や近年定着している「フリーアドレス制」などは、社員にとっては「新しい」「楽しそう」というイメージもあるでしょう。そうしたポジティブなイメージを持ってもらうことで、ナレッジ共有が自然発生的に作られていくのではないでしょうか。

昭和・平成初期の日本企業では、ちょっとしたレクリエーションや飲み会、サークル活動などが日常的に行われていました。

当時は単なるコミュニケーションとしか捉えられず、やがて時代に合わないものとして次第に縮小されてきた背景もあります。しかし今後は社員同士のコミュニケーションの重要性が徐々に見直され、レトロな社内行事も形を変えて、ナレッジマネジメントの一環として残っていく側面もあるでしょう。

事例から学ぶ!ナレッジマネジメントの成功に必要なポイント

成功の要因

ここまで失敗事例含めていくつかの具体的事例をご紹介いたしましたが、改めてナレッジマネジメントの成功に必要なポイントを3つほどご紹介したいと思います。

このポイントを踏まえれば必ず成功する、というものではありませんが、少しでも失敗に終わる確率を減らすためにも押さえておきましょう。

1.フレームワークに沿って活動を行う
2.場合によっては評価制度の変更やインセンティブを設ける
3.スモールスタートで社内に成功事例を作る

1. フレームワークに沿って活動を行う

ナレッジマネジメントを語る上で欠かせないのが「SECIモデル」と呼ばれる有名なフレームワークです。

SECIモデルとは、個人が持つ知識や経験などの暗黙知を、形式知に変換した上で組織全体で共有・管理し、それらを組み合わせることでまた新たな知識を生み出すフレームワークのこと。

一橋大学大学院教授の野中郁次郎氏らが提唱し、広義のナレッジマネジメントにおける基礎理論として用いられています。

SECIモデルは4つのプロセスで構成されており、これらが上手く機能すれば、企業活動においてベテラン社員の持つ属人的な暗黙知を他の従業員でも理解できる形として共有でき、従業員全体のスキルアップに繋がると言われています。

SECIモデルについての詳細はこちらの記事で詳しく解説していますが、こうしたフレームワークに沿って活動を行うことで、ナレッジマネジメントが進めやすくなります。

2. 場合によっては評価制度の変更やインセンティブを設ける

自分の持つナレッジを共有するために言語化・図式化したり、ツールに入力したりといった作業は社員にとって負担となります。

そこで、ナレッジを共有することにより何かプラスになる仕組みは作れないでしょうか。

共有したナレッジが新たなナレッジを生み出し、そこから具体的なプロジェクトが動き出したなどの共有を社内で広く行ったり、あるいは直接的に人事評価などにつながる仕組みがあるなどのメリットがあれば、当然多くの社員の参加が見込めます。

ツールによっては、情報共有した社員に「いいね!」や「拍手」ボタンによってリアクションを表示させるものもあり、こうした細かい機能もモチベーションを高めるのに有効だったりします。

3. スモールスタートで社内に成功事例を作る

ナレッジマネジメントを社内の文化としてしっかりと定着させる近道は、長期的な視野で取り組んでいくことが重要です。

まずは特定の部署やチームで、少しずつナレッジマネジメントの効果を実感してもらうところから始めると良いでしょう。最初から大きな成功を期待するのではなく、小さな成功を社内で積み重ねていきながら、理解者や賛同者を集めた上で徐々に展開していくのがおすすめです。

なおテスト的に導入するツールとしては、操作や機能がシンプルなものの方が良いでしょう。操作や機能が複雑だと社員への説明工数がかかったり、使いこなせないといった問題が発生する可能性が高いからです。自社のITリテラシーなどと照らし合わせながら選定していくのがベストです。

> ナレッジマネジメントツールとは?主な機能&種類、導入メリット徹底解説

まとめ

さて今回は、ナレッジマネジメントを社内に導入・推進するにあたって、知っておきたい失敗パターンと各企業の取り組み例をお伝えしました。

ナレッジマネジメントの歴史は意外にも古く、実は多くの企業がナレッジマネジメントに取り組みながら、失敗を重ねています。

しかし失敗は全てが悪いわけではなく、失敗することで一つ体験を積み、学びが深まるというメリットもあります。スモールスタートならば失敗によるダメージも最小限に押さえることが可能です。

今回ご紹介したような事例を参考に、自社におけるナレッジマネジメントの推進にお役立てください。

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