お客様名 | 株式会社デンソー |
ご担当部署 |
株式会社デンソー コックピット製造部 第3生産技術 FA生技5課 斉藤 将士 様
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導入製品 | Impulse |
導入時期 | 2021年7月 |
弊社では長年、自動車のコンビネーションメータの製作・販売を行っておりますが、従来はモータと針を組み合わせたスピードメータが主流でした。近年は液晶画面を通じて各種情報(スピード等)を描画することが多くなっています。
従来の仕組みより複雑化していることから、万が一液晶画面の表示に不具合が生じた場合、交通事故の原因にもなるため、より厳しく高精度な表示の検査を行う必要がありました。
自動車メータは様々な検査の工程を経て出荷されます。具体的には、照明・意匠などの外観検査、電気的な機能の検査です。今回は液晶画面の電気的な機能の検査を効率化、高品質化を目的とした取り組みに着手しました。
自動車メータの表示検査における今回の取り組みイメージ
実車での駆動に相当する描画を行いながら、瞬間的な異常を検出する動画検査システムを開発すべく、調査を開始しました。しかし、静止画を用いた異常検知が可能なAIシステムはいくつか見つかるものの、動画での異常検知が可能なAIシステムはあまり多くはありませんでした。
苦労しながら探していたところ、大規模かつリアルタイムでの動画データの分析も可能な「Impulse」という製品を見つけ、導入を検討しました。
導入に先立って複数社のAIソリューションを評価しました。動画データを用いた異常検知を行いたいという要望に対して、積極的かつ実現性の高い提案を行っていただけたのは「Impulse」を開発する、ブレインズテクノロジーだけでした。
メータを実車相当で駆動させるシステムは別で製作を行ったため、そのシステムとの連携には少し苦労もしましたが、そうした課題に対しても、一つひとつ前向きにアイデアをご提案いただけたことも魅力的な点でした。
取材時の様子(デンソー 高棚製作所にて)
実現性を検証するために、まずは市販のカメラで撮影したサンプル動画をもとにPoCを行いました。
非常に高い要求事項を提示しましたが、粘り強く開発を続けていただき、できることとできないことの選別や、できていないことをどう解決するかなど、約1年ほどの期間をかけながら開発を進めました。
実現性検証の中でも、特にカメラの視野調整(カメラの角度・ピント・明るさ調整など)に苦労をしました。
動画を撮影してAIで分析・検査をするという取り組み自体が初のチャレンジであったため、検証中には予期しない課題もいくつか出ましたが、その都度解決策をいただきながら進めることができました。
方眼紙などを用いてカメラの視野調整を行った
現在、量産稼働から約1年が経ち、安定稼働を実現しております。従来は検査員の目視に頼っていた検査ですが、AIを活用することで自動化が実現できただけでなく、目視では捉えられないような瞬間的な異常をも見逃さない常時監視の検査が行えるようになりました。
従来の検査と比較すると、目視検査にかかる時間はゼロにできているのではないでしょうか。結果として、現場での業務の効率化や出荷する製品の品質の安定化に貢献できていると思います。
現在は今回取り組んだ車種だけでなく、自分たちで他品番へ展開を行っています。また目視による官能検査を行う項目は数多くあるため、他の検査にも拡大していきたいと思っています。